プロローグ

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プロローグ

 とある国に広がる砂漠。他の国の領土を飲み込むほどの広大さを持つこの地にはオアシスがいくつも点在している。その中でもひと際中央に位置し、誰も近付くことのないこのオアシスには小ぢんまりとした 日干しレンガ作りの一軒家が泉の前に空しく居を構えていた。それがいつ建てられたのかはわからない。極たまに通り過ぎるキャラバンがそこの住人を見かけるが、彼ら曰く「まともな若い女たちがこんな辺境に住めるわけがない」と言う。  その通り、オアシスの住人とは二人の見目麗しい異国の女たちである。彼女たちがいつからここにいるのかは誰も知らず、この厳しい熱砂の地で平然と暮らしていることは誠に奇妙な事実だ。だからからか、彼女たちにはいつしか「蜃気楼の魔女」や「砂漠の令嬢」といったあだ名が付けられていた。  この物語は、そんな伝説めいた彼女たちの下に一人の――いや一匹の訪問者が現れるところから始まる。
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