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転機
ある日、わたしの父から一本の電話が鳴った。
父は地元で、それまで60年以上も
ひとつの会社を経営していた。
何度も危ない目にあってきた中
ここにきて、とうとう
首の皮一枚になってしまったというのだ。
後継者がいないならもう終わりだと
金融機関から最後通告を受けた。
そのことを夫に簡潔に話すと、上司である東さんの職場を退職して、父の会社に転職するなんて言う。
行く気満々の夫に対し、
わたしは、経営状態が半端ではないことを
前々から感じていたために反対した。
でも、夫はまったくの異業種、いわゆる畑違いの職場であることも承知で、
父の会社へ行くことを決意し、それから間もなくして、わたしの地元で単身赴任の身となった。
夫が転職して単身赴任が落ち着いた数ヶ月後のある日。
わたしは、自分の欲望を掻き立ててくれるダンディ東さんに、
今まで夫がお世話になったことを伝えよう
'お礼メール' を打つことにした。
それまで、メールなど一度も東さんに
打ったことはない。
自分の高鳴る感情を抑えつつも
丁寧な文章を心がけ、メールを打ち
送信ボタンを押した。
〉〉〉【告白】
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