幼児虐待

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それから2日後、朝から騒がしく隠蔽特別班に駆け込んできたのは休み明けのさくら。 さ「おはよー、ねー皆ちょっと聞いてー。」 座「おはようさん、何?大和すっ転んだん?」 さ「すっ転んだのは颯斗の方、まぁ泣かんかったからお兄ちゃんになったよ。  そうやなくて!運動会の時に聞いたんやけど隣街の保育園なんやけど変な噂あってな。保育園内で虐待あるみたいなん。」 さくらからの知らせに皆自然と会議の様な形に画面やホワイトボードのある大きいデスクの周りに集まっていく。 カ「それどっからの情報やねん?」 さ「ママ友から、はなよど保育園ってとこやねんけどなんか保育園に行きたがらない子供が何人か出てるらしくて。」 殿「でも児童相談所が動いてないって事は決定的なもんはないってことか。」 さ「そうなんよねー。」 ね「決定的な事?」 さ「痣あるとか怯えてるとかそう言う目に見える事はないみたいなんだよね。」 ね「だから児童相談所も動いてないと。」 座「子供の事やから全部を鵜呑みにして動く人はほとんどおらんしな。」 警察だけでなく他の行政も動いてないとなると中々難しいものもある。 さ「一応誰かが警察には相談したみたいやったから所轄の方には顔出したん。」 初「さくらの地区って東長田だっけ?」 さ「そう、そんでさっき東長田署寄ってみたんやけど手つけてる感じないし、それ以上にめっちゃ嫌な顔されたわ。」 殿「そりゃ当然だわな。」 カ「だって2ヶ月前くらいに証拠物の横領で刑事部長引っ張ったやん、それと地域課の領収書の不正報告。」 「そうやったー。」と脱力するさくら、ただでさえ悪事を暴かれて署内もまだしっかりと体制が整ってないのも対応出来ない要因だろうと他のメンバーは口々に話した。 さ「ねぇ座長これちょっと心配なんやけど、何人もいてるから怪しいのは怪しいねん。」 座「まぁ、そうやなー。」 同じく子供を持つ座長もほっとけないとは思っていたが確証もない中動くのに悩んでいた。 だがそこは常識はずれの部署、周りからは正義の意見が出る。 殿「ええんちゃいます、勝手に動ける俺らがやっても。」 初「そうっすよね。一応東長田署には相談しとる訳ですし。」 ね「そうです!警察は弱い人助けなきゃダメですよ。」 さ「ありがと姉さん!じゃ早速妊婦検診の所からあれ借りてくるね。」 ね「え?」 意気込むねねの手を取ったさくらはすぐ様OICを飛び出して行った。 取られた手をそのままに固まるねねの頭には『妊婦』の文字だけ残っていた。 「なんでこうなるかな…。」 捜査用のオンボロの軽自動車の助手席に乗っている不満満載のねねの格好はラフでゆとりのあるいわゆるマタニティウェア、それにお腹は大きく膨らみ見た目は妊婦そのものだった。 運転席にはカジュアルな服装の殿がガムを噛みながら座っている。 「しゃーないやろ、カツオは情報集めなアカン。初は顔がええから覚えられやすい。さくらは元々無理やし座長は所轄・上諸々に話し通すんやから、消去法。」 今の状況を淡々と話す殿、さくらは最初から近所でバレる可能性も考慮して現場からは外れていた。 「だからって何で夫婦二人で行かなきゃ行けないんです?別にシングルマザーでもいいのに…。」 「捜査は基本二人、教わってないんか?」 「そんなの分かってますよ、でも…。」 「お前そんな俺と夫婦の役が嫌なんか?」 「もっと清潔感のあって年の近い方がリアルじゃないかなと思っただけですー。」 「あんな、今日は朝から一本も吸っとらんから無駄口叩くとホンマにしばくぞ。」 面と向かって文句を言うねねにさすがの殿も語気を強めて注意する。 そしてガムを出したかと思うとまたすぐ新しいガムを口に放り込んだ。 「急にどうしたんです?タバコ辞めてくれたのは嬉しいですけど。」 「捜査のためや。妊婦の嫁さんとわざわざ来るほどの旦那やで、嫁さん身篭ってる横でスパスパ吹かす様な旦那が一緒に保育園の見学何て変やろ?ほら時間やぞ。」 「確かに。」と納得するねねに声をかけて車を出る殿はさっき放り込んだばかりのガムを出していた。 大きなお腹を抱えながらドアを開けたねねは「帰ってきてすぐに吸うな。」と心の中で思っていた。 殿とねねが潜入しようとしている時、はなよど保育園の近くでは初が聞き込みをしていた。行った先は年季の入った建物のだんご屋さん。 「こんにちはー。」 「あらイケメンの兄ちゃんやないの、何買ってくれるん?」 「それじゃみたらし10本。おばちゃんここらへんって治安どう?」 「治安?まあまあええんちゃう?あんまひったくりとかも聞かんし。」 「そっか、若い人達って結構住んでる?」 「若い人?うーん、若いママさんって感じはいるけど学生とかはおらんかなー。兄ちゃん刑事か?聞き込みっちゅうやつ?」 頼まれた団子を包むおばちゃんに地域環境を聴き込む初、立て続けに聞かれて気になるのはおばちゃんの性だろう。 ここで刑事と言ってもいいだろうがおばちゃんから刑事が来たと情報が漏れるのは可能性がかなり高い、なので初は別の人になりすます。 「俺ね不動産の営業マンでさ、近くのマンションの部屋扱ってて地域環境調べてるんだ。」 「なんやー、そりゃそんだけええ顔しとったら刑事より営業マンの方か向いとるな。」 「でしょー笑 ここらへんは保育園もあるからすぐに見つかるとは思うんやけどね。」 「保育園ってはなよど保育園か?いやーあんまりオススメはせんよ。」 「ん?どう言うこと?」 保育園の話しをすると顔をしかめたおばちゃん、何やら知っている様子。
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