3人が本棚に入れています
本棚に追加
「うちでは未満児も結構受け入れしてますよ、ちゃんと保育士さんもそれに合わせて多くいますし。」
「ホントだ、こんなにいるんですね。」
「なんせ二人とも初めてで不安でして、無理言ってすんません。」
その頃保育園内で見学していた殿とねね、園長の片岡が丁寧に説明しながら回っている。
そこで殿のスマホが鳴った、会社からだとその場を離れたが相手は初。
「もしもし、何か分かったか?」
『怪しいぐらいっすけどね、確証はないっんすけど。そこの男性保育士で目が細くてひょろっとした奴が怪しいんやないかって。』
「どっからの情報や?」
『近所の団子屋のおばちゃんす、前にそこの男性保育士とぶつかった時にめっちゃキレられたっ言うてて。何でも高いカメラ持ってるとかで。』
「ほぉー、なるほどな。」
『かなりの剣幕やったらしいんで、ちょっと探ってください。』
初からの情報を入れてすぐに戻る殿、戻った先では園長とねねが熱心に子供の教育に話しを弾ませている。
「あ、お仕事大事だった?」
「あぁ、資料の凡ミスだっただけ。あの上のクラスも見れます?」
「いいですよ、今は外で遊んでるので教室見た後に外行きましょうか。」
「ありがとうございます。」
笑顔で案内する片岡の後ろではコソコソと殿とねねが情報交換をする。
「男の保育士で目が細くて体型はひょっろこい奴が怪しいと。」
「男の保育士ですね。」
最低限の情報だけ交換してまた仲の良い夫婦に戻って片岡園長の後をついていく、外では沢山の子供達が走り回ったり遊具で遊んだり賑やかだ。
「外も結構広いんですね。」
「遊具も多くて楽しそうですね。」
「はい、子供達が我慢することなく遊んで欲しいですから。」
「あっ、男の先生もいるんですね。」
「ぇ、えぇ。最近では多いですよ。」
「次の検診でどっちか分かるんすけど、男の子やったら俺に似てヤンチャやと思うんで男の先生いてくれた方が安心しますわ。」
「女の子でもきっとヤンチャだとは思うんですけどね。」
「そうでしたか、確かに体力勝負な仕事ですからね。でもどの先生も折り紙や工作も得意なのでお子様の知育にも問題ないですよ。」
一瞬戸惑った片岡園長の素振りを二人は見逃さなかった、ただここで悟られては意味がないので殿が上手く話しをすり替えた。
そこで体をこっそり突かれたねねが小さいスコップなどの道具を見たいと行って用具置き場に行く。
その近くには砂場で遊ぶ男性の保育士、目の細くて痩せ型の保育士だ。
「こんにちは。」
「こんにちは、スコップだけでもこんなに沢山あるんですね。」
「結構寄付してくれる地域の人もいて、助かってますよ。」
「そうなんですねー。あっ!すいません。」
「いいえ、どうぞ。壊れたりしてないですか?」
「はい、この子最近動く様になってきて。びっくりしてつい笑。」
お腹を擦りながら答えたねねに男性の保育士もにこやかに応えていた。
その後一通り園内を見終えた殿とねねは園長に見送られて帰って行った。
二人揃って軽自動車に戻って来た途端大きく息を吐いた。
「あー、疲れたーーー。」
「あー…肺に沁みるー。」
「これを機会に辞めれば良かったのに。」
「これのために俺は働いてんや。」
疲労が車内を充満するのを消したのは後部座席に乗り込んできたさくら。
「おっつー、姉さんそれ似合ってるやん。」
「さくらちゃんそれ褒めてないよね?」
「こっち来てええんか?ママ友いたら厄介やろ?」
「まだお迎えには時間あるから大丈夫っしょ、どうやった?初からの怪しい男おるって聞いたけど。」
「うん、名前はよこかわ。名札は名字だけで下の名前は分かんなかったけど、一応指紋は取ってあるし顔も撮ってあるよ。」
「流石ねねさん、しっかり者の女房やん。」
「それよりこれ外すの手伝ってよー、もう腰パンパンになってる。」
疑いのある男に拾って貰ったスマホをジップロックに入れてさくらに見せるねね。
容疑者と思しき男の顔や声紋はこっそり取った動画で、拾って貰った時に指紋などしっかり仕事をするねね。
ただ証拠能力がないのもねねは重々わかっていたがそこら辺は諦めの境地だった。それよりも妊婦体験用の妊婦の肉襦袢を外したくてしょうがなかった。
これから数日後…
取ってきた証拠、近所の聞き込みや町の行政機関などを調べていき証拠固まったので園児達が帰った夕方遅くにOICの面々は踏み込むことになった。
殿「はーい、警察。後こっちは市役所の方ね。」
急にきて礼状を見せる殿に保育士達は固まっていた、そんなのお構いなしにメンバー達は容疑者をそれぞれ抑えてに行く。
その場にいたら保育士達はわけが分からずオロオロしている。
初「横河英明、児童ポルノ禁止法違反並びに児童虐待で逮捕する。カツオここ頼むな。」
カ「はーい。」
犯「な、何すんねんや!」
殿「おうおう、暴れんなや。」
初が横河を抑えている間にカツオが横河のカバンを漁る、中には一眼レフカメラが出てきて中のデータは裸になっている園児達ばかり。
初「うわー、そりゃこんだけ撮ってたら大事なわけか。」
殿「どれぐらいあんねん?」
カ「いやー、かなり。これ自宅にもかなり有りそうっすね。」
初「前科もあっからこりゃ長く世話になる事になるな。」
『あの保育園の若い兄ちゃんおっかないでー、ちょっと当たっただけでめっちゃ怒られてん。ちゃんと謝ったんやで!なのにカメラが何やら言うてて。怖かったわー。』
初が団子屋のおばちゃんから聞いた情報を元に横河に目星をつけていたが見事ビンゴ、指紋照合の結果以前も小学生に猥褻行為をして捕まっていたことが分かった。それでいてカメラの中身がバレたのに今だ抵抗する横河。
その向こうではねねが市の役員さんと一緒に片岡園長の所に行く。
ね「園長先生はこちらでお話しがあります。」
市「片岡さんこちらの保育園認可外ですよね?」
犯「それは…、元はちゃんとあったんですよ!」
市「それはここに前にあった保育園ですよね、半年前に新しく始めるって事で片岡さんが園長になる時には申請書類だけ要望して終わりでしたよね?」
犯「そうですけど…。」
項垂れる園長は諦めたのか力なく座っている、無事に犯人達を抑える事が出来てOICのメンバーはひとまずホッとした。
連行後の取り調べで片岡園長は横河の悪行に気づいていたが、逆に横河に認可を受けていない事弱味を突かれて黙認していたと自白した。
さ「座長が区役所に話し通してくれて保育士さんすぐに来てくれるみたいでホンマ助かった。」
座「今は待機児童とか多いから保育園なくなったら困るやろー。」
初「やっぱり子持ちの人の意見は重いっすね。」
殿「お前も子供作ったら分かるかも知れんで?」
カ「初さんに子供とか想像出来ん。」
さ「それ分かるー。」
横河と片岡園長が逮捕されてからは座長の根回しで行政が素早く動いてくれて保育園の運営は継続される事になった。
座「それ言うたら殿も再婚検討しいや。」
ね「えっ、バツイチだったんです?」
殿「今のご時世珍しいもんでもないやろ。」
座長に話しを振られて面倒くさそうにしている殿は逃げる様に喫煙室と言い張る物置の中に消えていった。
今日も大阪の街は平和です。
最初のコメントを投稿しよう!