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「ニーア・アンダーソン、身体を起こしてこちらを向け」
ニーアは我に返り、その声の方向に、手足を拘束されたままの身を捩る。見れば、監視の兵士が厳しい面持ちでこちらを睨んでいる。
……また尋問の時間が始まるのだろうか。もうこの軍艦内に囚われ、ベッドの上に横たわされてから、ニーアの体内時計はひと月ほどを計測していた。このまま、真実を話さなければ、自分の人間としての身分を奪われ、機械として即刻解体させる旨の脅しも、もう幾度となく彼女の耳を叩いている。
……自分の罪を考えれば、それも当然なのかも知れない。
だが、あまりにも多くの人を欺き、裏切ってきた自分の生において、最後に出逢った人間には自分の口で真実を伝えたかった。己の罪に比べれば、それはあまりにも軽微なことに過ぎぬとは分かっている。自己満足に過ぎないことも分かっている。それでも……。
そこまで考えを巡らせたとき、警備兵が、部屋の扉の電子錠を解除させ部屋を出て行く。そして代わりに部屋の中に入ってきたのは、2人の男……軍服姿の栗色の髪の青年将校と、彼に付き添われたゲイリーその人であった。
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