25 ニーアの告白

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25 ニーアの告白

 ……今日もまた、ノヴァ・ゼナリャの赤茶けた大地に夕日が落ちる。  その影の中を蠢く人の群れがある。葬列だ。  ニーアと恋人のアンドレイは、作業の手を止めてそれを見つめる。ニーアはいつものように黙祷をささげようと目を瞑ったが、苦虫をかみつぶしたようなアンドレイの声にはっ、と目を開けた。 「今日もまた工事で誰か死んだか……すべては、指導層の無茶苦茶な計画のおかげだ」  ニーアはそのアンドレイの厳しい口調に曖昧に頷く。だが、アンドレイの次の台詞は彼女の心臓を穿つのに十分なものだった。 「ニーア、僕はもう我慢できない。近いうちに、僕は地球世代と一戦構える。この星の開拓の主導権を、僕たち宇宙世代の手に引渡させるために」 「アンドレイ……?」  ニーアはアンドレイの突然の激白に耳を疑った。だが、アンドレイの瞳は怒りに暗く燃えている。  ……彼は本気だ……。  ニーアはごくりと唾を飲み込む。それでも喉がからりとすぐに渇く。  ……そして、暫しの沈黙のあと、アンドレイはニーアの顔を覗き込むと、こう言葉を爆ぜさせた。 「ニーア、君は地球世代の代表者である「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」の船長の娘だ。君が難しい立場になのは分かっている。戦いが始まれば、間違いなく君と僕は敵同士になるだろう。だから、どうかお願いだ。僕についてきてはくれないか」
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