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ニーアはアンドレイの言葉がすぐには理解できず、戸惑うように紫色の目を瞬かせた。だが、次の瞬間にはその真意を悟り、声を震わせた。
「それは、私にお父様を裏切れということ……?」
アンドレイは無言で頷いた。ニーアは即座に叫ぶ。
「そんな……そんなことできない……!」
するとアンドレイは哀しげに笑った。そうして、そうだよな、とばかりにゆっくり数度頷いた。
「だよな、ニーア、君は優しい娘だものな。だったら、今日こっきり、僕のことは忘れてくれ」
そして、アンドレイはニーアの震える唇を、自分のそれと素早く重ねると、微笑んでこう言った。
「大好きだよ、ニーア。どうか幸せで、いておくれ」
……迫り来る宵闇のなか、その場から足早に去って行くアンドレイの後ろ姿を、ニーアはただ心の内を動揺させながら、見送るしかなかった。
アンドレイを代表とする、宇宙世代の蜂起の知らせが、ノヴァ・ゼナリャの大地を揺るがせたのはその数日後のことだった。
◇◇◇
「……地球世代の指導層は、最初はさほど宇宙世代の蜂起を、重大視していなかったの。血迷った若者達の反乱、その程度の認識しか持っておらず、すぐに事態は沈静化すると、たかをくくっていたわ。だが、彼らの反乱は意外な速度で、乗員の間に広がった……。そして、本格的な戦闘がはじまるとその傾向は一気に拡大した。数ヶ月で戦局は反転、ついには地球世代の拠点が陥落するのは時間の問題となったのよ」
◇◇◇
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