25 ニーアの告白

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 ニーアは家のなかでひとり震えていた。宇宙世代軍のキャンプへの進攻が始まっていた。銃声と悲鳴が響き、すえた血の匂いもどこからか流れこんでくる。やがて大きな砲撃音、次いでドアが派手な音と共に破られた。それとともに銃を持った若者達が家の中になだれ込んできて、ニーアは声を限りに悲鳴を上げた。 「ここはジョン・アンダーソンの家だな? こいつはアンダーソンの娘か?」 「手込めにでもしたうえで、殺しちまえ、仲間への良い弔いだ」  ニーアは武装した若者達に、家の外に無理矢理引きずり出された。白昼の路上にもかかわらず、数人の男たちが彼女の身体に跨っては、その白い肌を無遠慮に漁る。ニーアの歯は恐怖でがちがちと鳴り、抵抗することもかなわない。そのときだった。 「やめておけ!」  大きな制止の声が飛び、男どもがはじけ飛ぶようにニーアの身体から離れた。おそるおそるニーアが起き上がってみれば、目の前にはアンドレイが銃を構えて息を切らし、立っていた。 「ニーア……無事か?」  アンドレイは泥だらけになったニーアを助け起こす。だが、安堵したのも束の間のことだった。 「ニーア、君の父さんたちは、どこへ行った?」  アンドレイは銃口をニーアの喉に突きつけて哀しげに問う。 「答えてくれないと、僕は、君を殺さなきゃいけなくなる」  ニーアはさすがに即答できずに、再び全身を震わせたが、アンドレイの指先がかちり、と引金にかかるのを見て、泣き叫びながら、父の行方を吐いた。 「カトリーナ植林地よ……! そこで、戦線を立て直すって……!」  すかさずアンドレイが頷くと、若者達が銃を掲げてその方向に駆けてゆく。その足音を遠くに聞きながら、ニーアはアンドレイの腕の中で気を失った。
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