25 ニーアの告白

4/6
前へ
/119ページ
次へ
 ◇◇◇ 「……内乱は宇宙世代軍の圧倒的な勝利で終わったわ。だが、ノヴァ・ゼナリャの悲劇はこれからが本番だった。宇宙世代による地球世代の旧指導層の徹底的な粛清がノヴァ・ゼナリャの大地を血で染め、生き残った者には容赦ない強制労働が課せられた。だが、地球世代も完全に膝を屈したわけではなく、次第にテロやサボタージュが頻発するようになり、人口も急減し、植民作業は完全に滞り、秘密裏にノヴァ・ゼナリャを脱出するものも続出したの。それにつれ、ノヴァ・ゼナリャの凄惨な状況が少しずつ地球に漏れ始めたのよ。アンドレイをはじめとした宇宙世代の指導層は、徹底した情報統制を行い、それを制止したが、もはや、「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」の歴史の開拓は血を血で洗う大失敗に終わったと、後世に喧伝されるのは時間の問題だったわ」  ◇◇◇ 「僕は、機械手術を受けようと思うんだ」  ある日アンドレイが、ぽつりとニーアに告げた。支配階級だけが住める緑の森にある、「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」の図書館を移設した書架の中でのことだった。本を繰る手を止めて、ニーアは耳を疑った。  なぜ、と言う顔のニーアを見てアンドレイは寂しげに呟いた。 「僕はこの星のためによかれと思って、地球世代に戦いを挑み、勝利した。だが、結果として、ノヴァ・ゼナリャの開拓を失敗に追い込み、また、多くの人を殺した。僕は罪人だ」  絶句するニーアを前にアンドレイは淡々と語を継ぐ。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加