4 欲望の赴くまま迷い込んだ先は

1/4
前へ
/119ページ
次へ

4 欲望の赴くまま迷い込んだ先は

 少女の居室で看護を受けるようになり、体感では1週間ほどが経過していた。体感、というのは、天窓から注ぐ陽のひかりと闇の交差の中でゲイリーが感じとった時間であり、時計も置いていない部屋では、正式な日数は分かろう筈もないのだが。そもそもこの異星の自転・公転時間も分からぬ故、ゲイリーは時の経過を知るのに、己の身体の感覚に頼るしかなかった。  少女は、彼に3度の食事を持ってくるとき、そして傷の包帯を交換するとき、と、「1日」に数度彼の元に現われる。そのたびに、彼は少女に、この星が何処の星域のなんという星であるのか、尋ねてみるのだが、彼女はその都度はぐらかすようにこう答える。 「それは……、おいおいの話にしましょう」  そう少女は床まで届く亜麻色の髪を揺らしながら、ゲイリーの瞼にそっと指先を置き、僅かの圧を掛ける。そうされると、なぜだかわからぬまま、ゲイリーはなされるままに目を瞑り、やがて深い眠りに落ちてしまう。しばらくは、その繰り返しの「数日」であった。  だが、次第に頭の傷も癒えてくると、ゲイリーの意識はいくぶん鋭さを取り戻し、また、それと同時に、暇を持て余すようになっていた。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加