26 その肌から伝わる君の孤独

1/5
前へ
/119ページ
次へ

26 その肌から伝わる君の孤独

 ニーアの長い長い告白を聞き終わってから半日後。  リェムとゲイリーは、再び、ニーアが監禁された居室にいた。リェムは、険しい表情でニーアの前に立っていた。それもそのはずで、彼は地球政府の上層部に、ことの顛末……つまりニーアの自供を報告し終わって、通信室から戻ってきたばかりであったからだ。 「地球政府のお偉方は、すぐにでも、君を地球に送還せよとのことだ」  リェムの通告に、ニーアはそっと紫色の瞳を翳らせると、ぼそりと呟いた。 「私は……どうなるのでしょう」 「それは分からん。人権に則って身分を扱うよう、進言はしておいたが」 「……そう、それはどうも」  ニーアは目を閉じながらリェムに軽く頭を下げて見せた。それから彼女はしばらくの間そのまま目を瞑っていたが、ゆっくり瞼を開くと、こうリェムに向かって囁いた。 「少し、時間をくれないかしら……400年以上の時を過ごしたあの書架に、別れを告げたいの」  リェムが眉を顰める。だが、それを見てゲイリーが口を挟んだ。 「おい、リェム少佐、それ位は良いだろう? 彼女にとっては、永い時を過ごした思い出ある場所なんだ。そこから離れろと彼女に言うのなら」
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加