26 その肌から伝わる君の孤独

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 ゲイリーは気が付かぬ間に寝入っていたようだ。目を覚ませば、朝の陽のひかりが書架を満たしている。  そして、ニーアがいたはずの傍らの床には、1枚の紙が折りたたまれて落ちていた。ゲイリーは、ぼんやりとする目をこすりながら、その紙を開く。そこにはこうあった。 「ゲイリー、少し先に行っていて。ひとりきりで、最後の時を過ごしたいの。                                ニーア」  ……嫌な予感がした。 「ニーア!」  ゲイリーは彼女の名を呼んだ。だが、書架の中を見渡す限り、そこにはニーアの姿は見えない。  ……すると、外だろうか?  ゲイリーはガラスドームから出ると、蒼く広がる森の中に踏み入ってニーアを探そうとした。その数十秒後。  大きな爆発音が、ゲイリーの耳をつんざいた。次いで、背後から熱風と爆風が吹きすさむ。ゲイリーが振り向いたときには、ガラスドーム、そしてその中の書架は劫火のなかに沈んでいた。
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