4 欲望の赴くまま迷い込んだ先は

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「……この家にも、酒のひとつやふたつ、置いてあるだろう」  いつしか、そう考えるようになったゲイリーはある夜、その欲望のままに、ベッドから、そして部屋から、抜け出すことにした。幸いにもドアは施錠されていなかったので、彼は難なく、その身を外に滑り出した。  廊下は暗闇に沈んでいた。照明ひとつ無い。  ……あの少女はこんな妙な家で暮らしているのか。ゲイリーはそれを一瞬、不思議に思ったが、次の瞬間には、酒への執着心に気持ちは切り替わり、そんなことはどうでも良くなっていた。ゲイリーは手探りで、壁を伝いながら、暗闇の中をただただ、ひたすら、歩んだ。やがて、感覚にして、200メートルほど進んだであろうか。唐突に、ゲイリーの手は扉らしきものに触れた。  ゲイリーの手は慎重にその扉をまさぐり、やがて、ドアノブのような突起に指先が届く。彼は、一瞬の躊躇いの後、ドアノブを思い切りよく引いた。  途端に世界に光が満ちた。  ……眩しさに目が慣れ、気が付けば、ゲイリーは煌々と灯が降り注ぐ、ガラスドームの中に立っていた。それは、広大なドームで……そして、その内部に所狭しとおびただしい数の棚がそびえ立っている。 「なんだ、この棚は……」  ゲイリーは予測もしなかったその光景に、呆気にとられながらひしめき合う棚のひとつに近づき、その中身を見定めようと試みた。
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