4 欲望の赴くまま迷い込んだ先は

4/4
前へ
/119ページ
次へ
「本棚……?」  そう、目をこらしてみれば、その棚には何千、何万冊ともしれぬ本がぎゅうぎゅうと詰まっている。……それも、そのすべてが、古式ゆかしい紙の書籍である。そんな棚が、広大なガラスドームのなかに、見渡す限り、整然と並んでいる。その様子からは一体、全部でドーム内に何冊の本があるのか、見当すら付かない。 「……なんなんだ、ここは……!」  ゲイリーは酒への渇望も忘れ、呆然と、本棚の谷間に立ち尽くした。視界を占める無数の本に圧倒されたまま、目を見開いて、立ちすくむことしかできない。 「見つけてしまったのね」  気が付けば背後に少女が立っている。少女はすっ、と、ゲイリーの横に立つと、彼の顔を見ながら、静かにこう告げた。亜麻色の髪が音もなく床を跳ねる。 「ここは虚空の書架。古今東西の書物が集められた図書館」 「虚空の書架……?」 「そして私は、この書架の番人よ」
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加