5 全くもって君は天使なんかじゃない

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 その言葉に、ゲイリーは思わず息をのんだ。そして震える声でニーアに問いかける。 「ちょっと待て、冗談だろう? ニーア、君はあの船の乗員だったというなら……! ……だったら君は400年以上の時を生きているということじゃないか」 「冗談じゃないわ。長く寿命を保ち、この仕事に適応できるように、私の身体の大半は機械化されているの。いわば私は、アンドロイドね」 「……君が、アンドロイドだと?!」  ゲイリーは驚いてニーアの顔を見つめ返した。艶やかな長い亜麻色の髪、わずかにそばかすが見え隠れするバラ色の頬……それは確かに美しく整っているものの、生身の人間のそれにしかゲイリーには見えない。どう、目をこらしても。  ……なにもかもが、悪い冗談だ、とゲイリーは思った。そしてむくむくと胸の中に、疑念が沸く。  ……俺は、この少女に騙されようとしているのではないか?  そのとき、唐突に、ゲイリーは頭に激しい痛みを覚えた。傷の痛みではない。アルコール依存症の禁断症状からくる頭痛だった。次いで手が震え出す。彼は溜らず、呻き声を上げながら、その場に蹲った。その傍らにニーアが駆け寄る。ニーアは、彼の身体を抱き起こそうと、震える手に触れた。同時に、銀色のワンピースに包まれたニーアの柔らかな胸のふくらみが、ゲイリーの頬に接する。  その途端、ゲイリーの中で得も知れぬ劣情が湧き上がった。
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