8 はた迷惑な話と助けは唐突に

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8 はた迷惑な話と助けは唐突に

「……冗談だろ?」  ゲイリーはのけぞった姿勢のままニーアを質した。質した、というか、いきなりのに度肝を抜かれて、そう言葉を発するのが精一杯であった、というべきか。だが、ニーアの目は真剣だ。 「冗談じゃないわ。私は本気よ」  その表情からも、ゲイリーをからかっている風は微塵もない。ゲイリーの背に冷汗が吹きだした。 「……俺にこの本の山の、番人になれってか?」 「そうよ」  ニーアは冷静だ。その沈着な声から、紫色の美しい眼差しから、彼女の本気がじわじわと伝わってくる。耐えかねて、ゲイリーは我を忘れ、黒い髪を振り乱し喚いた。 「冗談じゃない、俺はここの主なんかにならんぞ! こんな湿気(しけ)た星の図書館なぞ、知ったことか!」  しかしニーアには動じる様子は、ない。そして、椅子に座ったまま手元の本をぱたん、と閉じると、とゲイリーに重々しく告げた。 「これは遺言なのよ」 「……遺言? その、君が愛した、「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」とやらのお仲間のか?」 「そうよ、飲み込みが早いわね、ゲイリー」 「……そんなん、何も俺には関係ねぇ話じゃないか! 迷惑極まりない!」
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