8 はた迷惑な話と助けは唐突に

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 ゲイリーは忌々しげに叫ぶ。自分の意志に関係なく、全く予想もつかぬ方へ流れていく話に、彼の頭のなかは混乱の極みだ。だが、ニーアはゲイリーをなおも冷静に見つめながら、彼の一番痛いところを突いてきた。 「それじゃあ、ゲイリー、あなたはどうするの?」  「……どういう意味だ」 「このままこの星を離れて、大人しく、サナトリウムに連れて行かれるつもり?」  ……ゲイリーは思わず、言葉に詰まった。この星を離れれば、彼はそこにしか行くことを許されぬ運命であるのは、全く否定しようのない事実である。……の音も出ないというのは、このことである。言葉を失い、ゲイリーは恨めしそうな目で、ただ、ニーアの美しい顔を睨みつける。  ……両者は暫し黙り込み、静寂がガラスドームの中の書架を支配した。  そのときである。  急に、ガラスドームのなかが、翳った。ゲイリーとニーアは思わずガラスドームの天井を見上げる。  すると、ガラスドームを通して見える雲のなかを、大きな影がゆっくり横切っていくところであった。ゲイリーにはその影に見覚えがあった。  ……轟音こそしなかったものの、あれは……・ゲイリーが乗ってきたものよりは、だいぶん小型だが……。 「宇宙船(シップ)?!」  そうこうしているうちに、宇宙船はゆっくりと上空を飛び去っていく。羽ばたきこそせぬが、まるで悠然と大空を飛ぶ巨大な鳥のように。やがて、ガラスドームのなかは、再びひかりで満ちた。翳ったときと同じように、唐突に。
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