8 はた迷惑な話と助けは唐突に

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 明るさを取り戻した書架の中で、ニーアが呟いた。 「……あなたを探しに来たようね」 「不時着した船から、救難信号が発信されていたか……」  ゲイリーが苦々しく語を放つ。あの航行中の爆発と不時着の衝撃で、宇宙船のオートメーション・システムはすっかりやられたとばかり思っていたが、どうやらあの船は、思った以上に頑丈にできていたらしい。ゲイリーは思う。……まったく、俺は、ついているのか、それともよっぽど運がないのか……。  すると、ニーアが、すっ、と椅子から立ちあがった。銀色のワンピースの裾を翻して。そして、やや厳しい面持ちでゲイリーにこう告げた。 「ゲイリー、隠れていなさい」 「隠れるも何も、奴らは、程なくここに来るぞ。あの距離なら、確実に、このドームはレーダーに捉えられている」  その言葉にニーアの紫の瞳がきらり、と光る。そんなことは分かっているとばかりに。  彼女は唇に薄い笑いを浮かべながら、ゲイリーに、こう言い放った。 「……だから、迎え撃つのよ」  ……そして、その不敵な台詞と、唖然とするゲイリーをその場に残し、ニーアは書架の奥に消えていった。
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