9 全くもって天晴れな君の勇姿

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 その永遠に続くとも思われた応酬は、唐突に楔が打たれた。二機の無人小型索敵機(ミツバチ)に挟まれつつ攻撃を躱していたニーアが、それまでになく高く上空へと跳んだのだ。次の瞬間、ニーアの身体は、片方の無人小型索敵機(ミツバチ)の上に飛び乗っていた。戸惑ったように双方の敵が一瞬、動きを止める。  ニーアはその隙を見逃さず、前面の一機に向かって、すかさず両肩から対空砲を発射した。何度目かの爆発音が響き、無人小型索敵機(ミツバチ)がまた一機、その身を霧散させる。  そして、それに続く、ニーアの動きはより素早かった。彼女は背に手を回し、槍のような物体を自らの戦闘着から引き抜くと、自らの乗った無人小型索敵機(ミツバチ)の制御部分を勢いよく串刺しにしたのだ。途端に、最後の敵が火を噴く。次いで、最後の爆発音が轟く。黒煙を上げながら舞い落ちる無人小型索敵機(ミツバチ)の破片が、ばらばらと、ガラスドームの表面を叩いては滑り落ちていく。  ……そして、辺りに静寂が戻った。  激しい戦闘の後を窺わせるのは、ガラスドームの上空を煙らせる黒い煙のみである。それも風に吹かれて次第に薄れゆく様子を見ながら、ゲイリーは夢でも見たのでは無いか、と本棚のひとつに寄りかかりつつ思った。  だが、煙の薄れる向こうから現われた、すっくとガラスドームの上に立つ長い髪の人影が、そうではないと彼に現実を告げる。  漆黒の戦闘着(スーツ)に身を包んだニーアは、手にしたままの槍を背中に戻すと、再び跳躍し、ゲイリーの視界から姿を消した。
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