10 重大な軍議はそ知らぬうちに行われている

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「以上が、デネブ星域、惑星ノヴァ・ゼナリャで、先日発生した戦闘の模様であります。……ノヴァ・ゼナリャはいままで、無人惑星と考えられておりました。だが、ご覧になりましたように、ノヴァ・ゼナリャには疑似生命体が存在することが判明しました。そしてその疑似生命体に、我々は完膚なきまでに叩きのめされたのであります」  リェムの低くよく通る声が会議室に響きわたる。 「ですが、その疑似生命体とは、見ての通り、地球外生命体ではないようです。そして、皆様もご存じの通り、ノヴァ・ゼナリャといえば、約500年前、我々の祖先が「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」なる船で地球を飛び立ち、最初に見つけた植民可能な惑星であります。そのことを鑑みると、あの生命体は我々の祖先と関係があると考えるのが自然です。ですが、500年も生きながらえる人間は普通おりません。それゆえ、あの少女……疑似生命体は、我々の祖先により産み出されたアンドロイドと考えるのが自然でしょう」 「……ふむ、よく分かった、レフ・リェム少佐。報告ご苦労であった」  その声にリェムは一礼して、壇上より自らの席に戻る。リェムは、つくづく、ノヴァ・ゼナリャに乗り込んだ際、救援機に無人小型索敵機(ミツバチ)を搭載しておいて良かったと思った。あの戦闘をこうやって無人小型索敵機(ミツバチ)のカメラで映像に撮ってこなければ、頭の固い軍幹部に、果たしてその一部始終を信じて貰えたかどうか分からない。
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