10 重大な軍議はそ知らぬうちに行われている

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 ……なんせ、この目で見た俺でさえ信じられない光景であったからな。  リェムは心の中で独りごちた。そもそもは、サナトリウムに向かう途中に行方不明になった宇宙船を捜索するだけの、簡単な任務であったはずなのに、気が付けば救援機のレーダーは地表に巨大な建造物を捉えていた。そして、その上空に派遣した無人小型索敵機(ミツバチ)の前に現われた、美しい亜麻色の髪の少女。いま思い出しても、夢のなかのような出来事だったと思わずを得ない。まったくもって、ギリシャ神話の女神アテナのような颯爽とした、あの完璧な戦いぶりと云ったら……。ありゃ、いい女だ。例えアンドロイドだったとしても、だ。 「惑星ノヴァ・ゼナリャのある第6星域。たしか、あそこは例の電波が発せられていた星域ではなかったかね、リェム少佐」  リェムは議長である将軍からのその声に我に返った。……いかんな、あの少女のことを思い返すとついつい我を忘れちまう……。リェムはそう胸中で呟きながら、栗色の髪を揺らし顔を上げると、投げかけられた質問に答えるべく口を開いた。 「はい、その通りです。いままでは、無人惑星と思われていましたから、ノヴァ・ゼナリャは発信元の探索から外していたのですが……」 「なるほど、そうだったな。だが、こうなってくると、ノヴァ・ゼナリャが……というか、ことによっては、あの、我々の祖先が作ったと考えられるアンドロイドが、電波の発信元である可能性も出てくるわけだな」 「……仰せの通りです」  リェムは手短に答えた。途端にまた議場が、ざわざわっ、とする。
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