11 「偉大なる開拓者号」についてのレクチャー

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「……だが、分からない点があるぞ。……このノヴァ・ゼナリャが、結局、多くの人間を養うには適さぬ星として、開拓は未達成で終わり、ここを礎に君の仲間たちは再び宇宙のあちこちに旅立っていった、というのは俺も知っている。だが、なら、何故君はここにいる? なぜ、他の仲間とともに旅立たなかった? そして、身体を機械化してまで、何故、君はここでこの書架の番人をしているんだ?」  するとニーアの紫の瞳が心なしか翳った。そして、少し寂しげな口調でこうゲイリーの質問に答えた。 「私は、この書架が好きだったのよ。ここから離れたくなかったの。私の愛した人と築いた場所だから。それに、古今東西の知識を電子化する仕事も好きだったし……。あと、身体を機械化したのは、そもそもがこの仕事のためじゃないわ。もともとは、開拓中の事故で私は身体を機械化せざる得なかったの。そのあと、この仕事に就くことになったときに、さらに改造を重ねて、この業務のスペシャリストであるアンドロイドになったのよ」 「……俺には分かりかねるな。数百年も、ひとりでこの星で生きることが分かっていて、わざわざ書架の番人を務めるなんぞ」  ゲイリーは理解できないとばかりにぼさぼさの黒髪を掻きながら、頭を振った。それに対しニーアは暫し無言だったが、ふと思い出したようにゲイリーに問うた。 「そういえば、ゲイリー、あなたに愛する人はいて?」
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