12 ピクニックとやらは陽気にやるものだが

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 ゲイリーは嬉しそうに支度をするニーアを見つつ、憎まれ口を叩いた。だが、不思議と悪い気はしない。ニーアの表情がいつになく柔らかく、見た目にふさわしい年相応の笑みをその顔に浮かべていることに、この星に不時着してから感じたことのなかった穏やかな気持ちが生じている。  それは、その経緯と思惑はどうあれ、いま、自分はこの少女に、たしかに必要とされている、という実感から来るものと気づき、ゲイリーは、はっ、とする。なにしろ、何者かに陥れられたあの忌々しい事件以来、ゲイリーに寄せられるのは、軽蔑あるいは憐れみの眼差しのみであったのだから。  ……俺は、こんなにも、人に必要とされることに飢えていたのか……。  ゲイリーはそう心中で反芻しつつ、ニーアの手元に手を差し伸べると、籠の柄をさりげなく掴んだ。 「あら、私が持つわよ」 「いや、こういうときは男が荷物を持つもんだ」  そしてゲイリーは籠を手にぶら下げると、やや、おどけた口調でニーアに言った。 「さあ、行こうじゃないか。楽しいピクニックとやらに」  ニーアが、思わず、ふふっと声を上げて笑う。その笑顔の眩しさに、ゲイリーの心は、洗われる思いだった。
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