12 ピクニックとやらは陽気にやるものだが

3/5
前へ
/119ページ
次へ
 ……久々に土を踏みしめて、眩しい緑のなかを歩くのは、やはり、心地が良いものだな。  木漏れ日の跳ねる森のなかを歩きながら、ゲイリーは思った。彼の数歩前を歩くニーアの足取りも、心なしか軽やかに見える。彼女は森を歩くのに邪魔になるからと、長い亜麻色の髪をいまは結い上げていた。結った髪の隙間から見えるニーアのうなじからは、そこはかとない色気が発せられており、ゲイリーの胸を思春期の少年のようにどぎまぎさせる。とはいえ、先日のあの強烈な蹴りを思い出すに、彼女に再び手を出す気には、さらさらならなかったが。  森は鬱蒼としていたが、地球でいう亜熱帯の植生によく似ており、ゲイリーには馴染みやすいものであった。また、森のなかには小道が整備されており、そこを辿る分には、歩くのにさほど困難も感じない。 「ニーア、この道は君がずっと整備してきたのかい」 「そうよ」 「何百年もか。それはなかなか、骨の折れる作業だっただろう」 「わけないわ。この森は私にとって世界そのものなんだから」  ニーアはゲイリーを振り返ると、笑いながら言った。やがて道は小さな川に差掛かる。 「この辺で休みましょうか」  ニーアはそう言うと、川辺の木の根元に座り込んだ。ゲイリーも足を止め、ニーアの隣に腰を下ろす。名も知らぬ鳥が頭上をさえずりながら、異星の青空を飛んで行くのを、ゲイリーは目を細めながら見つめた。一方ニーアといえば、いそいそと籠に詰めてきた食糧を地表に並べ始めている。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加