12 ピクニックとやらは陽気にやるものだが

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 ニーアはゲイリーの手を取って、すっくと立ち上がった。そして、つられて立ち上がる格好となったゲイリーを抱き寄せる。 「なっ……! ニーア……」 「ゲイリー、私にしっかりと捕まっていて」  そう言うとニーアは、地表を蹴った。抱き寄せたゲイリーとともに、ニーアの身体はぐんぐんと上昇する。ゲイリーは突然のことに声も上げられず、ただ、落下しないようにニーアのやわらかな身体にきつくしがみつくのみだ。そうしているうちに、ニーアの跳躍は木々の上を軽く越えた。  そこで、ゲイリーの目が捉えたのは、こんもりした森の全貌と……そしてそれを囲むように地平へと広がる、果てない赤茶けた砂漠だった。 「砂漠……?!」 「そうよ、この森は砂漠に囲まれているの。この惑星では、ここはちょっとしたオアシスに過ぎないわ、あとは死の大地」  風を切り、急降下しながら、ニーアはゲイリーの耳元でちいさく囁く。 「私は……この森のなかでしか、生きられないのよ。だから、この森は私の世界の全てなの」
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