2 不時着するは緑の森

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2 不時着するは緑の森

 次にゲイリーが目を覚ましたのは、地球時間に換算して、それから45時間ほどが経過したあとのことだった。  ゲイリーは驚いた。自分が冷たい船室の床に転がりながらも、生きていることに。そして、船窓を覗いてみて、さらに驚いた。そこからは、草いきれが匂ってきそうな、鬱蒼とした森の光景を認めることができたからである。 「さては、自動着陸装置がまだ、生きていたのか……」  忌々しいことに、とゲイリーは心のなかで付け加えた。どうやら、あの爆発でも宇宙船のオートメーション・システムは、全部が吹き飛ばなかったらしく、暴走しつつも接近した着陸可能な惑星を感知し、そこに不時着したらしい。 「忌々しいな」  今度はゲイリーは口に出してはっきりとそう独りごちた。緑があるということは、酸素も十分で、生物も生存可能な惑星を感知して宇宙船は降りてくれたのだろうが、さりとてありがたいとは、全く、ゲイリーには思えなかった。  ……やっと、死ねると思ったのに。  彼の胸に響くのは、そんな彼自身の空虚な声だ。何処ともしれぬ惑星に不時着してまで、生き延びたい命では、なかった。しかも、たったひとりで。食糧は宇宙船内に少しは残っているだろうが、それもいつか底をつくだろう。それにどんな生物が生息してる星なのかも、まったく分からない。結局のところ、このままでは、ゲイリーに待っているのは緩慢な死である。
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