13 地下室に転がるは謎の日記

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 ……どうにも思考がまとまらないな。酒を今日はそんな飲んでもないのに。  ゲイリーは薄闇の中でぐっと手を伸ばした。すると、彼の伸ばした指先が、ひやっとした冷たく分厚いなにかに触れた。食糧パックとは違うその感触に、ゲイリーは意外な思いで、それを引き寄せようとした。だがその物体は、思った以上にずっしりとして重く、指先だけの力では手元に寄せることができない。ゲイリーは訝しみながら、起き上がると、その物体の近くに身を寄せ、それが何かを確かめようとする。薄闇の中、ぼんやりとなにかの塊が目の前に浮かびあがる。  ……目をこらしてみれば、果たして、ゲイリーが手にしていたのは、古ぼけた分厚い紙の帳面であった。 「紙の本……? 書架でもない、なぜここに?」  ゲイリーは独りごちながら、頁を捲った。だいぶその紙は劣化が進んでいるものの、そっと捲れば大丈夫そうだ。その中にはぎっちりと手書きの文字が連なっているのが、薄闇の中でも分かる。ゲイリーは顔を書面にぐっと近づけて、その文字を読み取ろうと試みた。埃っぽい匂いが彼の鼻腔をまさぐる。やがて彼の目は、いくつかの数字を捉えた。 「西暦2654年3月8日……日付? とすると、これは日記か?」  いまからおよそ400年前の日付が綴られたその帳面を捲りつつ、ゲイリーは呟く。400年前といえば、ちょうどニーア達を乗せた「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」がここノヴァ・ゼナリャに着陸し、開拓を試行錯誤している時期のことだ。ゲイリーの視線は帳面の文字に吸い込まれた。地下室の明るさは、帳面に綴られた文字を読むのにぎりぎりのものであったが、それでも彼はいくつかの文章を拾い読むことに成功した。彼は、ゆっくりとその文字を口にしてみる。
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