13 地下室に転がるは謎の日記

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「西暦2655年4月24日……「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」の同志である我々の間に、深刻な亀裂が生じた。彼ら彼女らとの協議は決裂し、即日、交戦状態に入る……5月31日……戦局は我々に不利な状況に陥った……7月5日……ついに敵は我々の拠点に攻め込んだ……一方的な殺戮、虐殺が発生……7月8日……我々は全面的降伏を余儀なくされた……あの、裏切り者め……7月20日……粛清の嵐が始まる……」  文面を読み進めるうちに、彼の声と手は震えた。  ……なんだ? この日記は?   動揺するゲイリーの手から、ずるり、と帳面が滑り落ちた。ゲイリーの目に、帳面の裏面に記載された署名が飛び込んでくる。そこには「ジョン・アンダーソン」とあった。……どこかで聴いた名前だ、とゲイリーは記憶をまさぐる。……そうだ、ニーアだ、ニーアの名前も、たしか、「ニーア・アンダーソン」ではなかったか。すると、これはニーアの親族に当たる人物の日記であろうか?  ……それは置いておいても、だ。 「亀裂、決裂、交戦、殺戮、虐殺、粛清……なんだ? この物騒な文字の羅列は? 俺が学校で教えられた開拓史には、こんな事は一言も書いてなかったぞ……!」  ……そして、この星で、ニーアから教わった歴史にも……。  ……そのことに考えが及んだとき、ゲイリーは、見てはいけない書物を手にしてしまったことに、遅まきながら気付き、慄然としたのだった。
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