14 取引という名の裏切り

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 ゲイリーの予想通り、通信室からその音は漏れていた。彼はその部屋の中にそっと入ると、置かれた機器類に目を走らす。すると、モニターの横の着信ランプが光っているのが、目に留まる。 「やはり、着信音だったか……しかし、どこからだ?」  ゲイリーはそう独りごちながら、モニターのパネルを操作した。いくつかのコードを入力し、電源の再起動を繰り返す。すると、モニターの赤いランプが点滅したと同時に、唐突に途切れ途切れの音声がスピーカーから流れ出た。 「……応答せよ、……応答せよ」  暫しの躊躇いのあと、その声に応じて、ゲイリーはマイクに口を近づけ、語を放った。 「こちら遭難船、現在、惑星ノヴァ・ゼナリャに不時着している。聞こえるか?」  すると、スピーカーの向こうが途端にざわつく気配がして、そしてほどなく返答があった。 「聞こえている。こちらは、地球政府軍第6星域部隊だ。貴殿の名は?」 「ゲイリー・サンダース。この船の乗客だ」 「よし、サンダース。暫くそのままで待っていてくれ」  そうして、スピーカーからの音声は一旦、ぷつり、と途絶えた。  ……なんなんだ、何を勿体ぶりやがっている、とゲイリーは思わず心の中で悪態をついた。
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