14 取引という名の裏切り

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 通信が再開したのは、それから15分ほど後のことだった。急にモニターが光が満ちたかと思うと、画面に地球政府軍の制服を着た、栗色の髪の若手将校の姿が映った。彼は、モニター越しにゲイリーに名乗る。 「ゲイリー・サンダース、私は第6星域軍のレフ・リェム少佐だ。君の乗っていた遭難船捜索の責任者である」 「それはそれは、ご苦労さまで……」  ゲイリーは、待たされた挙句、唐突に始まった通信に、やや皮肉めいた口調で応じた。それにリェムは僅かに眉を顰めたが、彼はそこには何も言及せず、そのかわり、いきなり話を本題に振った。 「同時に、私は先日、君の今居る惑星ノヴァ・ゼナリャで発生した戦闘の指揮官でもある。我々は君の惑星にいるアンドロイドに、完膚なきまでに叩きのめされたわけだが、その一部始終を君は見ていたのか?」  ゲイリーは急に話題がニーアのことに及び、思わず、虚を突かれたような顔つきになった。それをに見逃さずリェムは、ゆっくりと、だが有無を言わせぬ口調でゲイリーを画面越しに質す。 「あのアンドロイドは何者だ? あの美しい少女の姿をしたアンドロイドについて、君の知っていることを教えてほしい」 「それは……」  ゲイリーはリェムの詰問に押され、なんと答えれば良いか分からず、語を濁す。だがリェムは、畳みかけるようにゲイリーに問いかける。 「何を躊躇している、サンダース。質問に答えろ。それとも何か、君はあのアンドロイドに対して、義理でもあるのか」 「まあな、助けられた身でもあるからな」
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