2 不時着するは緑の森

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 ゲイリーは生きたいとは思っていなかったが、このまま不時着した宇宙船の中で、干からびて死んでいくのは、できれば回避したいと思った。ゲイリーはゆっくりと立ち上がり、船室のドアを開けた。そのとき頭に鋭い痛みが走って、そこに触れてみれば、赤黒い血がべったりと掌を染めるのをみて、はじめてゲイリーは頭部を怪我しているのに気が付く。歩く度にずきずきとその傷が痛むのを感じながらも、ゲイリーは緊急脱出用のハッチがある箇所へと歩を進めた。  誰もいない宇宙船の廊下は、薄暗く、壁を伝う手にはひんやりとした金属の触感が伝わってくる。そして、静寂。宇宙船内にはゲイリーのゆっくりとした足音のみが、かつん、かつん、と木霊するのみだ。そうこうするうちに、ゲイリーはようやくハッチの箇所まで辿り着いた。  着陸時の衝撃からであろう、ロックが外れていたハッチは、彼ひとりの力でも易々と開くことができた。重々しくスライドしたドアの向こうから、異星の風が一斉になだれこんでくる。ついで、陽の光も。ゲイリーは眩しさに思わず目を歪めつつ、躊躇うことなくハッチから延びたタラップへと足を移した。一歩、また一歩と異星の表面に足が近づき、やがてゲイリーの両足は地表に、静かに着地した。
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