15 焔のなかに消ゆ

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 ……だが、ゲイリーは我を忘れて叫んだ。声の限り。 「……ニーア! ニーア!」 「サンダース、これ以上ここに民間人が居ることは作戦に差し支える」  ……どれほどの時が経ったか、気が付けば、叫ぶゲイリーの腕は、ばらばらと地表に降下してきた兵士たちに掴まれていた。 「さぁ、速やかに船に乗れ」 「ちょっと待ってくれ、俺はニーアがどうなったか……!」  だが、抗うゲイリーに冷たく兵士は命じる。 「それはもう、君の知りうる範疇ではない。後は我々の仕事だ」  ゲイリーは言葉を失う。そして、なんと言葉を継げばいいか分からぬまま、彼は燃えさかるガラスドームの天頂を力無く睨み付けた。あの紫色の瞳の眼差しを、その面影を、目前の炎の中に探し求めながら。
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