16 自業自得と言われりゃそうだが、失意の帰還

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16 自業自得と言われりゃそうだが、失意の帰還

 飛行機の窓には果てなく続く雲海が映っている。ゲイリーは久方ぶりに目にする地球の空の光景を、ただ見つめていた。かといっても、さりとて、思った以上に感慨は胸にわかない。  ……せっかく戻って来られたというのにな、と彼は心中で苦笑する。同時に、自分がどこか心ここにあらずなことにも、ゲイリーは気づく。そこでようやく、彼は今だ己の心が、あのノヴァ・ゼナリャの森のなかにあることを知り、ますますもって自分が可笑しくなる。 「俺から裏切っておいて、勝手なことだ」  ゲイリーは自嘲気味にひとり呟いて、あの、亜麻色の髪の少女の面影を、振り切るように機内の案内板(インフォメーション・ボード)に視線を投げる。そこには「着陸まで1時間5分」との表示が浮かんでいた。……あと1時間足らずか。ゲイリーは目を瞑った。こうしていると、ニーアと過ごした日々がまるで夢のようにさえ感じる。彼女はいま、どうしているのか。いや、生きているのだろうか。ゲイリーはぼんやりとそんなことを思いつつ、ノヴァ・ゼナリャの大地から軍艦内に収容された後に受けた事情聴取のことを思い出していた。
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