16 自業自得と言われりゃそうだが、失意の帰還

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 ……ゲイリーは、今回の攻撃の総司令であるリェム少佐と、軍艦内の狭い一室にて対峙していた。  聴取は数時間に及び、リェムは、ノヴァ・ゼナリャに不時着してからのゲイリーの日々について、事細かに彼に質してきたが、ゲイリーが答えられることは少なかった。  ゲイリーが答えられたことと言えば、遭難船の中での通信と同内容のことと、あとは、ニーアの400年来の仕事……書架の本を朗読して電子書籍に変換する作業の詳細に過ぎず、聴取を終えたリェムは明らかに不満そうな顔つきであった。  そして、そのままの表情で、話の最後に、ニーアの生死を問うたゲイリーに、リェムはこう告げた。 「……あのアンドロイド……君のいうニーアとやらは行方不明だ」 「行方不明……」 「そうだ。あの戦闘用アンドロイド(バーサーカー)どもの派手な爆発によって、身体ごと森の何処かに吹き飛ばされたらしい。現在、部下が捜索中だ……だが」  リェムは腕組みしながら、身じろぎもせずゲイリーに語を継ぐ。 「彼女の生死がどうあれ、それが君の今後に関係があるかといったらどうだ? ないだろう?」  ゲイリーはことばに詰まった。彼は顔を引きつらせ、暫しの後、喉の奥から絞り出す様な声音で呟く。 「それは……確かにその通りだが……」 「そうだろう。だったら、ノヴァ・ゼナリャであったことは忘れろ、他言も無用だ。その方が今後の君の精神衛生上にもよかろう」
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