16 自業自得と言われりゃそうだが、失意の帰還

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 暫くの沈黙の後、ゲイリーは頷いた。その高圧的な言い方は気に食わなかったが、リェムの言うとおりだと思ったからだ。  ……たしかにそうだ、地球に帰ってきてしまえば、俺の人生にノヴァ・ゼナリャでの日々は何の意味も無い……。  脳裏にそんな文句を思い浮かべるゲイリーに向かって、リェムが次に尋ねたのは、全く別のことだった。 「サンダース、君はこの船を下りたら、これからどうする」 「……ボストンにいるはずの妻に会いに行く……俺を待っているかどうか、自信は無いが」 「……そうか。なら、バンクーバー宇宙港までは送ろう。そこからは、好きにするといい」  そして、リェムは話し合いのめどはついたとばかりに立ち上がり、ゲイリーに目配せで部屋からの退出を促した。ゲイリーは無言のまま席を立ち、部屋を出て行こうとドアのノブに手を掛ける。  そのとき、ゲイリーの背に向かって、リェムが思い出したように、不意に問うた。 「最後に聞いておきたいのだが、ニーアは「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」の歴史について、どう語っていたかね」  その言葉に、ゲイリーは思わず振り返り、リェムの顔を見た。同時に、あの地下室で見つけた謎の日記のことが胸をよぎる。だが、結局、彼はこうとだけ答えるに留めた。 「……どうも、何も。教科書で習ったことと、変わらない内容だった」 「……ふむ、そうか」  ゲイリーの答えに、リェムはきらり、と目を光らせる。だがそれも一瞬のことで、また、彼はそれ以上のことを何もゲイリーに質そうとはしなかった。
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