17 俺が何したっていうんだ

3/5
前へ
/119ページ
次へ
 ……3分、4分と時間が経過する。ゲイリーの耳に、昂ぶった自分の心臓の鼓動が否が応無く響き渡る。  ……それから数分、ゲイリーは息を殺して路地に潜んでいたが、通りからそれ以上の銃撃はなかった。  どうやら、相手は、ゲイリーが路地に逃げ込んだことで、これ以上の攻撃を諦めたようだ。ゲイリーはへなへなと、すえた匂いのする地面に転がり、息を深く吐いた。安堵の気持ちが心を満たすと同時に、危うく何者かに命を奪われるところだった現状を再認識した彼は、今更のように心からぞっとした。  ……いったい、誰なんだ……俺を襲ったのは……?  彼は頬の傷口を掌で拭いながら、心の中で独りごちた、そのとき。 「ゲイリー、ゲイリーじゃないか?!」  路地の反対側から、自分の名前を呼ぶ黒い影が唐突に現われ、ゲイリーはそれこそ飛び上がらんばかりに驚いた。その人影は自分の名を再度呼びながら、ゆっくりと近づいてくる。ゲイリーは動くこともできず、ただその人影を凝視するばかりだ。だが、その声には聞き覚えがあった。もしかして……。そうゲイリーが思ったとき、唐突に大通りを横切った車のライトが、ぱあっ、とその横顔を照らし出し、ゲイリーは、あっ、と声を上げ、懐かしいかつての知己の名を叫んだ。 「……スチュアート・タイラーか?!」 「そうだよ。俺だよ、ゲイリー。……お前、こんなところで転がって……どうしたんだ?」
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加