18 街角にて胸をよぎる君の面影

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 ゆっくりと彼はボストンの市街を歩いて回った。サリーと通った教会、サリーと過ごしたレストラン、サリーと買い物をした店……すべてが本当の夢のように遠い日になってしまったな、と彼は思いつつ目に留め、そのたびに自嘲の溜息を吐いた。  やがてゲイリーの足は、市街のビルの隙間にある小さな公園に辿り着いた。なにやら大勢の人が集まっている光景に目を奪われ、彼は足を止めた。しばらく様子を窺っているうちに、彼は、この付近では頻繁に蚤の市が開かれていることを漸く思い出す。ゲイリーは何とはなしに、その人いきれの中に吸い込まれるように足を運び入れる。  ……蚤の市というか、ガレージセールというべきか。  その公園には、これでもかと言う数の露店が開かれており、その見物客で大きくもない公園は大賑わいだった。手作りの洋服や手芸品、不要になった衣服や玩具、なかには、どこで仕入れてきたのか分からないような古物や、怪しげな機械のジャンク品なども目に入る。のんびりと露店を冷やかしながら、ゲイリーは人混みの中を進んでいく。ふとそんな彼の足が止ったのは、今では珍しくなった紙の古書がうずたかく積まれたとある露店の前である。
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