18 街角にて胸をよぎる君の面影

4/5
前へ
/119ページ
次へ
「おや、お前さん、それはなかなか市場には回らない、貴重な本じゃよ。たしかそれは200年ほど前に発刊された研究書だ。人類の宇宙開拓史、それもかの有名な「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」の宇宙開拓についての論文じゃよ」 「「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」……」  ゲイリーは手に取った古書の頁をそうっと捲る。  知らぬ間に、その手は僅かに、震えていた。それを見て老人が慌ててゲイリーに唾を飛ばす。 「こら、それはとっておきの本なんじゃ! そんな危なかっしい手で頁を捲るでない! それは初版本なんじゃ。今では紙の書籍としては数冊世界に遺っているかという論文のな。しかもこれは中身が大変興味深いとのことで、出版当時は大いに研究者を騒がせたと言われている書じゃよ」 「興味深い……?」  ゲイリーは怪訝な顔で、本の表紙を見つめ返し、だいぶん色あせた黒い文字を目で追う。  そこにはこう記されていた。 『「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」の惑星ノヴァ・ゼナリャ開拓に関する一考察』
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加