18 街角にて胸をよぎる君の面影

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 ……ゲイリーは咄嗟に叫んだ。 「おい、爺さん、この本をくれ」  すると老人は、わかりやすく目を輝かせ、次いで、薄い笑いをそのしわくちゃの口に浮かべ、ゲイリーに言う。 「……本気かね、安かないぞ、その本は」 「幾らだ?」 「……500ドルでどうかね?」 「……ぼったくりやがって、強欲爺……!」  ……だが、結局、ゲイリーは財布から500ドルを捻りだした。この本はどうしても手に入れねば。ゲイリーの本能がそう囁いていた。これだけあればどれだけ酒が飲めるか、という考えが、ちらり、と脳裏に浮かんだが、それを無理矢理、理性で押し込んで。  そして彼は、ニューヨークへの車中で、無我夢中になってその古書を貪り読んだ。  ……その本の概要は、つまり、こんな内容であった。
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