19 ボルフェンク・ペテルレ著『「偉大なる開拓者号」の惑星ノヴァ・ゼナリャ開拓に関する一考察』の抜粋

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 結論から述べれば、ノヴァ・ゼナリャの植民事業史は、これまで言われていたように、平和的な歴史では全くなかったということだ。  いや、寧ろ、その歴史は、対立と争い、策謀と陰謀、殺戮と虐殺に満ちた血なまぐさいものであった、というべきなのだ。  「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」の乗員は、ノヴァ・ゼナリャへの着陸以前から、世代間対立を抱えていた。  つまりは、「地球出立から乗船していた生粋の乗員=地球世代」と、航行を続ける過程で「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」の中で産まれた、「地球を知らない若い世代=宇宙世代」の二派に別れていたということである。  この二派は、最初こそ協働して植民作業に当たっていたが、年月を得る毎に、主に後者の宇宙世代から、年配者である地球世代に対する不満が募るようになっていった。というのも、植民作業の主導権を握っていたのは地球世代の乗員であったが、この世代が植民作業の最終目的を「あくまでも地球に酷似した環境」に拘っていた。そのために、ときに無謀ともいえる工事を乗員に強い、その結果として、多くの犠牲者を出していた現実があった。これに宇宙世代は反発し、次第に両者の溝は深まっていった。
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