19 ボルフェンク・ペテルレ著『「偉大なる開拓者号」の惑星ノヴァ・ゼナリャ開拓に関する一考察』の抜粋

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 そして、着陸から6年がすぎた西暦2655年4月、両者は決裂し、ノヴァ・ゼナリャは血で血を洗う内戦状態に陥った。  戦況は当初は五分五分であったが、次第に戦局は宇宙世代に有利に働いた。これは、地球世代の子弟から、少なからぬ裏切りが発生したためといわれている。両者の、ことに宇宙世代による陰謀は熾烈を極めたとされ、ついに地球世代は同年7月、全面的降伏を余儀なくされた。    だが、この内戦の過酷さはこの後が本番であり、降伏した地球世代の指導者を、宇宙世代の若者達は容赦なく粛正し、ノヴァ・ゼナリャの大地は赤く染まったとされる。地球世代の生き残りは、その後の植民作業にて強制労働を強いられ、宇宙世代から奴隷に等しい扱いを受けたという。  だが、宇宙世代が実権を握った後も、両者の争いが滅したわけではなく、両勢力によるテロリズムや謀殺といった報復行為が後を絶たず、次第に「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」の乗員達は疲弊し、ノヴァ・ゼナリャの工事は滞った。  その結果として、ノヴァ・ゼナリャの植民事業は断念せざるを得なくなり、結局、最終的にノヴァ・ゼナリャは放棄され、無人惑星に帰した。  これが栄光と希望に満ちた歴史、と従来主張されてきた「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」の開拓史の真実なのである……”
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