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20 俺としたことが、酒も飲まずに調べ物に励んでる
ニューヨークの、朝の喧噪が太陽のひかりとともに、窓からなだれ込んでくる。眠りから覚めたゲイリーは、前日、ボストンから戻ってきたのち、自室のベッドの上で服を着替えることもなく寝込んでしまっていたことを改めて思い出す。
喉がからからに渇いている。ゲイリーは乱れた髪を手で撫でつつ、ぼんやりとした頭のままゆっくりと起き上がり、キッチンに向かった。
だがその足は、ベッドから床に転げおちていたなにかに触った。拾い上げてみれば、それは、夢うつつに陥る間際まで何度も繰り返し頁を捲り続けていた、あのボストンの蚤の市で手に入れた古書だった。
「夢じゃなかったか……」
彼は昨夜貪るように読んだその本が、きちんと実在することを改めて認識し、深く溜息をついた。
そして掠れた表紙の題字をもう一度見つめ直す。
著者はボルフェンク・ペテルレ。ゲイリーには聞いたことのない名前だ。名も無い一歴史学者なのだろうか。
「『「偉大なる開拓者号」の惑星ノヴァ・ゼナリャ開拓に関する一考察』……か」
ゲイリーはベッドに腰を再び下ろすと、その本の頁をまた捲り、その悪夢のような内容に目を通す。通常言われている、そしてニーアから聞いた「偉大なる開拓者号」の歴史像を底辺から覆す内容の、その記述。あのノヴァ・ゼナリャの地下室で手にした謎の日記を裏付けるような、その内容。
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