20 俺としたことが、酒も飲まずに調べ物に励んでる

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「いったい、どうなっているんだ……どっちが本当のことなんだ?」  ゲイリーは明らかに混乱していた。  ……もし、この古書だけを手に入れていたならば、ゲイリーはこの本が提示して見せた「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」の歴史像を笑って否定しただろう。馬鹿馬鹿しい。捏造にもほどがある。学校で教わった歴史とも、通常の定説とも全く異なりすぎていて、相手にするまでもない。  だが、今のゲイリーには、ノヴァ・ゼナリャの地下室で手にしたあの日記と、この本の奇妙な符号が、気になってならない。たかが一論文と、この古書を一笑に付すことがどうしてもできない。  そこで彼が思い出すのは、ニーアのことだった。……彼女なら、このふたつの事実の乖離について、何らかの説明ができるのではないだろうか。だが、それは、こうして地球に帰還してしまった身としては、もう叶うことはないだろう。……だが。 「調べてみるか……」  ゲイリーは本を埃だらけのサイドテーブルに置くと、身支度をすべく立ち上がった。  ……数時間後、彼はひとり、最寄りの図書館の閲覧室にいた。  ゲイリーは図書閲覧用のモニターの前に陣取り、腕組みをしながら浮き上がる文字を一語一語睨み付ける。考えつく限りの検索ワードを打ち込み、「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」についての書籍を呼び出しては目に焼き付けた。何十冊という数の電子書籍が彼の目を通り過ぎていく。
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