20 俺としたことが、酒も飲まずに調べ物に励んでる

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 だが、収穫はなかった。その呼び出した書籍データはすべてが、従来の通説に基づいた内容のもので、あの古書に一致する記述の本は一冊とて見当たらないのだ。古書を書いたボルフェンク・ペテルレの他の著書でさえそうなのである。そして彼の著作の中に、あの『「偉大なる開拓者号」の惑星ノヴァ・ゼナリャ開拓に関する一考察』はヒットさえしなかった。  ……これはどういうことだ? あの日記と、古書の一致は、偶然の賜物なのか……?  そう心中で呟きながら、ゲイリーは、固まった思考と姿勢をほぐすべく腕を思い切り伸ばし、欠伸をした。  すると、唐突にその腕を掴む者が居る。驚いて振りかえってみれば、そこには、地球政府軍の軍服姿の男が鋭い眼光を投げかけていた。しかも、ひとりでなく、数人の軍人が彼を半ば取り囲むように屹立しているではないか。 「なっ……!」  ゲイリーが驚いて声を上げようとすると、腕を掴んでいる男が小声で彼の耳元で囁いた。 「騒ぐな、ゲイリー・サンダース。我々は君に危害を加えるつもりはない。ちょっと同行して欲しいだけだ」 「……だとしても、人にものを頼むには、それなりの態度ってものがあるだろう。驚かせやがって」  ゲイリーは舌打ちしながら悪態をついた。だが、男たちは動じる様子もない。  ……これだから、軍人って奴はいけ好かないんだ。……と、彼はそこまで考えて、あることに思い至り語を継いだ。 「あの、リェム少佐って奴か? 俺に用があるのは?」
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