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21 ドーナツを囓りながら聞く、君への意外すぎる疑惑
リェムは、ゲイリーを図書館近くのコーヒーショップに連れ出した。
ちょうど時間は昼時で、近くの商店やオフィスから昼食を求めに来た人で店はごった返していた。リェムはゲイリーはふたりきりで店に入り、混み合った店内でなんとか2人分の席を確保する。
リェムは注文を取りに来た、愛想のないウェイトレスにコーヒーとドーナツを注文すると、落ち着かない様子のゲイリーに向き直った。
「どうした、サンダース? ここの代金なら、俺の奢りだぞ」
「当たり前だ……。俺が気にしてるのはそんなことじゃない。大事な話がしたいんだろう? あんたは。それなのにこんな賑やかな場所で良いのか?」
そこまで話したとき、相変わらず、むっつりとしたウェイトレスがやってきて、テーブルの上に無造作に2人分のコーヒーとドーナツを置いていく。ピンクのチョコとココナッツがトッピングされた、いかにも甘ったるそうなドーナツにゲイリーは顔をしかめたが、リェムは顔をほころばせて、さっそくそれを囓り、満足げに頷く。
「うん、地球のドーナツは、やはり美味い。宇宙船のキッチンで、食事のおまけに作る代物とは大違いだ。そう思わんかね、サンダース」
「……俺はドーナツの話はしていないぞ」
ゲイリーはドーナツを恍惚の表情で頬張るリェムに半ば呆れながら、ブラックコーヒーをあおる。すると、ドーナツを囓り終えたリェムが、口をナプキンで拭いながら、にやり、と笑った。
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