3 天使のような君に出逢う

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3 天使のような君に出逢う

 ゲイリーは懐かしい夢を見ていた。  航海士として宇宙を旅した日々、それを共有した気心の知れた親友の顔。ゲイリーは己のいるべき場所に、立ち戻れたと、その場に自分の姿を認めては、信じ、安堵した。その後に訪れた、あの地獄のような日々こそ夢だったかのように。  ……だが、急速にそれらの風景が白いひかりのなかに遠ざかり、気が付いてみれば、自分の視界は、配管がむき出しになった無機質なコンクリートの天井と、そこに作り付けられた天窓を捉えていた。天窓からは、さんさんと陽の光が注ぎ、木々の緑がそよぐ様子が窺える。  それでゲイリーは、あの幻のように消え去った日々は、もはや遠い昔の出来事でしかなく、いま、自分は不時着した見知らぬ異星にいるという現実を思い出す。 「……またしても、死に損なったか……」  ゲイリーの目覚めの第一声はそれだった。  それにしてもここはどこなのだろう。気が付いてみればゲイリーは、清潔な白いシーツの敷かれたベッドに横たわっており、彼の身体の上には、シーツと同じように洗い立ての匂いがする毛布が掛けられている。起き上がろうとしてみれば、ずきり、と頭が痛む。だが、その頭部に手を回してみれば、ぐるり、と包帯が巻かれている感触が伝わってくる。  ……傷に手当てが、されている……。一体誰の手で?  ゲイリーは頭の傷の痛みに耐えながら、ゆっくり半身を起こし、周囲の様子を確かめようとした。
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