21 ドーナツを囓りながら聞く、君への意外すぎる疑惑

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「ハックが発覚したのは十数年前のことだ。あるときの定期点検で、中央図書管理局のホストコンピュータに何者かの侵入が認められた。その侵入の履歴を辿ってみると、なんと400年近い昔から断続的にハックの痕跡が認められた。地球政府は慌ててそのハックに関して調査を始めた。なぜなら、ホストコンピュータに保存されている重大な公文書の内容が改ざんされては大事だからな。だが、調査の結果、その被害は皆無だった」  リェムはそこまで一気に語ると、冷めきったコーヒーを一気に啜る。そして一旦、息を吐き出し、次いで、一語一語を噛みしめるようにゲイリーに囁いた。ここが重要だ、と言わんばかりに。 「……しかしながら同時に奇妙な事も判明した。そのハックの内容というのがとても特殊なものだったのだよ。それは特定の図書……「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」に関する電子書籍のデータだけを狙ったものだったのだ」 「「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」に関するデータだけ……?」  ……余りに思いがけない話の展開に、ゲイリーは思わず息をのんだ。
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