21 ドーナツを囓りながら聞く、君への意外すぎる疑惑

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「ともあれ、政府としては、中央図書管理局へのハックという事実は放置はしていられぬ。極秘に、政府は躍起になってハックに関わっている電波の発信元を調べた。だが、それは、幾ら探査を重ねても、今のところ、私の管轄する第6星域からとしか特定できていなかった。……しかし、「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」に直接関わる惑星ノヴァ・ゼナリャに、あのニーアというアンドロイドがこの数百年来存在すると分かった以上、その電波の発信元……ひいてはハックの首謀者は彼女ではないかと、我々は疑惑を抱かざるをえない、というわけだ」  ゲイリーの、空のコーヒーカップを持つ手は、いつの間にか、小刻みに震えていた。賑やかな店内の物音が、何処か遠くの世界の出来事のように感じてならない。だが、リェムの語りはまだ終わらない。 「我々は何としてもこの謎を解かねばならない。本当に彼女が首謀者だとしたら、いったい何を狙ってのハックだったのかという真実を。……それが「偉大なる開拓者(グレート・パイオニア)号」の歴史と、どういう関わりがあるのかも含めてな」  ……そこまで話して、ようやくリェムは、長い語りを打ち切った。ふたりの間に沈黙の帳が降りる。  やがて、腑に落ちたとばかりに、ゲイリーが唸った。 「……だから軍はニーアを生け捕りせねばならなかったのか」 「そうだ。だが目算が狂い、未だにニーアは爆発に巻き込まれたまま行方不明だ。現在も捜索は進めれているが、生きているかどうかも分からん。困ったことだよ。私もこの件ではお偉方から相当お叱りを喰らってる」
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