22 どいつもこいつも俺を騙しやがって

2/4
前へ
/119ページ
次へ
「……この間男め! サリーはどこだ?!」  そう叫びながら彼はスチュアートに掴みかかる。  勢い余り、もんどり打ってゲイリーとスチュアートは家の中に身を転がせた。ゲイリーはスチュアートの上に馬乗りになると、感情のままスチュアートの頬を一発、二発と殴打した。スチュアートがたまらず呻き声を上げる。だが、激情のの外れたゲイリーの手は止らない。  そのとき、家の奥から女の叫び声がした。そう、懐かしい、夢にまで見た、あの女の声が。 「スチュアートから離れて、ゲイリー……!」  その声の方に視線を放れば、ネグリジェ姿のサリーが、彼にレーザー銃を向けて立ち尽くしていた。  ゲイリーは昏倒したままのスチュワートから身を離すと、ゆっくりと、愛しい妻の方に身体を向け、そして彼女を質した。 「……どうしてだ? サリー? お前はどうして俺を裏切った?」  銃を持つサリーの手は小刻みに揺れている。だが、その銃口はゲイリーの頭に向けられたままだ。 「好きよ……いいえ、好きだったのよ、ゲイリー……。だけど、私、あなたが宇宙に出てしまうと寂しくて……寂しくて仕方なくて……そうよ、最初はちょっとした浮気のつもりだったのよ……」  ゲイリーは、サリーの顔を呆然と見つめる。  なんの三文ドラマだ、これは。と、どこかで自分を嗤う声がする。まるで白昼夢のなかにいるみたいだ、とも。だが、サリーの独り言ともつかぬ残酷な台詞は、彼の胸を容赦なく貫き続ける。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加