23 君の生存を喜ぶ暇もありゃしない

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 ……ゲイリーは床に転がったまま、アルコールが抜けきらぬ頭をぼりぼりと掻きつつ、焦点の定まらぬ目のまま自嘲した。 「そうだ、俺はニーアを裏切ったんだった……俺もサリーと、たいして変わらぬ……」  ゲイリーはそんな自分が可笑しくて、口元を歪めると、寂しく嗤った。そのとき、玄関のベルが大きな音を立て部屋に響き渡り、彼は思わずどきりとする。  ……来客とは、珍しいことだな……。  彼はそう思いながら、ふらふらとおぼつかぬ足取りながらなんとか立ち上がると、ドアのモニターに目を向ける。  ……画面には栗色の髪の、軍服姿の男が映っていた。 「このたびは気の毒だったな、サンダース。心から同情する」  リェムの声が狭いアパートメントの一室に響く。ゲイリーはベッドに寝転びながら不機嫌に尋ねた。 「……何の用だ」  するとリェムはゲイリーの腕をおもむろに引っ張り、彼を半強制的に起き上がらせる。ゲイリーは抗議の声を上げようとしたが、それはリェムの次の言葉にかき消された。 「ニーアが見つかった。身体の損傷は激しいが、致命的な損壊は免れていたよ。いまはノヴァ・ゼナリャに着陸させた軍艦内に収容されている」  ゲイリーが息をのむ。脳内の酒が一気に冷めていく。リェムはそんなゲイリーの顔を真っ向から見据え、そして、ゆっくりと語を継いだ。 「ニーアは君に逢いたいと言っている、サンダース」
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